宅建の内容に関して、面白そうな事を紹介するコラム第二弾となります。第一弾はこちら

宅地建物取引業の免許と聞くと土地や建物を売買する際に絶対に必要な免許と思いそうですが、

取引において、ある条件を満たす満たさないかで免許が必要かどうかが変わってきます。
今回は意外と色々な場面で免許が必要そうでいて、実は必要ないという、宅建試験でも頻出の『宅地建物取引業免許のいらない取引』とは何かを簡単にご紹介します。

今回のコラムは個人が試験を受けて資格を取得をする『宅地建物取引免許』(宅建免許)とは別の、
不動産取引を行う会社が事業を営むにあたって、国に申請する『宅地建物取引免許』の話です。

土地建物の取引を行う業者が国から貰う営業許可が『宅地建物取引免許』
その許可をもらうために必要な条件として個人の資格である『宅地建物取引免許』持った人材が必要という事になります。

自己物件  他人の物件の代理他人の物件の媒介
売買
交換
賃貸×
免許の要、不要について、よく参考書に載っている表

宅建業免許とは

正式には宅地建物取引業免許と言います。

つまり宅地建物取引業にあたらなければ免許は必要ないのです。
ではこの3つは具体的には何なのでしょう?

宅地とは

宅地とは現在建物が立っている土地、もしくは建物の敷地のために使われる土地の事で
用途地域内(国が何をどう建てるか指定している地域、栄えてる所はだいたい用途地域内)においては道路・公園・河川・広場・水路以外の土地の全てが宅地に当たります。

そして用途地域外の場合は農地、墓地、資材置き場、駐車場など、建物を建てる予定の無い土地は宅地にあたりません。こういった土地の売買は宅地の売買に当たらないので宅建業免許は不要になります。
近年試験で出たのは、

『用途地域外のソーラーパネルを建てる予定の土地を売買する時に宅建業免許は必要である』

〇か×かという問題で、免許は必要ないので× という問題が出ていました。

建物とは

建物とは、建築基準法第二条一項より、土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの
(これに類する構造のものを含む。)の事を言います。

トレーラーハウスなど、土地に根差していない、牽引などで容易に移動可能なものは『車輛に加工を施した工作物』と見なされるので、建物の扱いにはなりません。
しかし、プレハブの住居等は吊り上げて移動可能ですが、容易に移動可能ではないため建築物に当たります。
ガレージ、物置(イナバ等)、コンテナなども大きさや条件によっては建物にあたります。

取引業

不特定多数反復継続して取引する事を『業』といいます。

つまり不特定多数で無かったり、反復継続していなければ免許は必要ありません。

この部分がよく試験のひっかけ問題として頻出します。

取引業と見なされる場合と見なされない場合の例

売買する時

ここでよくある問題を見て見ましょう

問題:会社が自社の社員のために自社保有地を分譲したり、他社の物件を斡旋する行為は取引業に当たる。

○か×かどう思いますか?

正解は×です。

不特定多数ではなく、自社の社員という特定の相手への取引のため取引業には当たらず、免許は不要となります。

では次の問題です。

問題:遠方に引っ越す事になり、今ある土地をいくつかの土地に文筆(土地を複数の土地に分けて登記をする手続き)して何人かに売却したい免許は必要である、○か×か

正解は○です、複数に分けた土地を複数の相手に売却をする時点で反復継続した売買と見なされます。
相続した土地や今持っている土地を分割して売却する場合は不動産会社を間に通すとしても自身が売り主になる限り、国に認可を貰い宅地建物取引業免許を得なければ売却はできないという事になります。

また、相続した家をそのまま売却するなどの1回限りの取引の場合は事業性が低いので、反復継続とは認められず免許は不要になります。

いくつか持っている建物があり、そのうちの二つをたまたま近い期間に売却したという場合も免許不要です。

また、収益を得るために頻繁に購入と売却を繰り返す場合は「業」と見なされる事が多くなります。
自身の使用のために建物を購入し、使わなくなったので売るという場合は業とはみなされない場合が多くなります。

結局の所、どういうケースが「業」にあたるのか、免許が必要になるのか明確に定めらているわけではないので、問題になった際はさまざまな要因を勘案して判断されます。
無免許で宅建業を行っていたと判断された場合は3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科されます(宅建業法第79条第1項第2号)。

賃貸の場合は

賃貸の場合は『自ら貸借』の場合は免許が不要になります。
つまり、自らが所有している土地建物を、賃料を対価に貸し出す場合には免許は必要ないという事です。

こちらも宅建の問題が頻出する部分になります。

自身が所有する、家、土地、ビルのテナントなどを不特定多数に貸し出す場合は免許不要です。
しかし、誰かが所有する建物の管理を任されて、不特定多数に賃貸の募集行う場合は免許が必要となります。
また、誰かが所有する建物を借りて、その借りた場所を誰かに貸し出す行為、いわゆるリースや転貸と言われる行為の場合は免許が不要となります。

では問題です。

宅建士免許試験問題 平成30年度 問41

次の記述のうち、宅地建物取引業の免許を要する業務が含まれるものはどれか。

1 A社は、所有する土地を10区画にほぼ均等に区分けしたうえで、それぞれの区画に戸建住宅を建築し、複数の者に貸し付けた。

2 B社は、所有するビルの一部にコンビニエンスストアや食堂など複数のテナントの出店を募集し、その募集広告を自社のホームページに掲載したほか、多数の事業者に案内を行った結果、出店事業者が決まった。

3 C社は賃貸マンションの管理業者であるが、複数の貸主から管理を委託されている物件について、入居者の募集、貸主を代理して行う賃貸借契約の締結、入居者からの苦情・要望の受付、入居者が退去した後の清掃などを行っている。

4 D社は、多数の顧客から、顧客が所有している土地に住宅や商業用ビルなどの建物を建設することを請け負って、その対価を得ている。

答えは 3番です

1は所有する土地に建てた建物を自ら貸借しているだけなので免許不要です

2は色々書いてありますが、結局のところ自らが所有するビルを貸し出しただけの話なので免許は不要です。

3は自分の物ではない建物の賃貸契約を結んでいるので取引業に当たります。

4はただ建物を建てているだけなので宅建は全く持って関係ないです。

こういった問題の多くは『自ら貸借』である事をややこしく表現する事で、試験の緊張や文章の読み疲れた受験生をひっかけることを目的としています。
『自ら貸借は免許不要』である事など少しでも宅建を勉強していれば誰でも知っている事ですが。
こういった文章に変える事で「もしやこれは免許がいるのでは?」と疑心を抱かされるのです。
問題に引っかからないようにする一番シンプルな方法はとにかく過去問を解くことでよくある引っかけパターンに慣れる事です。



免許不要の取引であっても宅地建物取引業免許を持ったプロを頼る方がベスト

売買や賃貸を行う際に、どういった場合に個人間取引となり、どういった場合に免許が必要な取引となるのか、一般の方が判断するこは難しくまたリスクのある行為となります。
契約手続きに際しても、業者を通さずに個人間同士でやりとりをした際に、後になって揉め事になったり、契約に不適切な取り決めや、逆に取り決めなければならない事が抜けていたり、法令違反を事を行っていたりする場合があるため、個人間取引には様々なリスクが存在します。
そういったリスクをできるだけ排するために、免許不要な取引であっても不動産会社及び取引士を通して契約する事が一番のおすすめです。