こんにちは!

総武線市川駅南口の南口不動産です。

オーナー様が貸借している物件でご入居者が亡くなってしまった、

そんな時に

亡くなった事を必ず次の入居者へ伝えなければいけないのではないか、

亡くなったことを伝えて入居して貰えるのか、

家賃を下げないといけないのか、

フルリノベーションをしないといけないのか、

オーナー様は色々考える事がありますね。

そんなお悩みをお持ちの方に今の不動産屋業界における事故物件の告知義務の状況などをお教えします。

家賃の値下げや退去時修繕の規模を考える一助となれば幸いです。

事故物件

令和3年10月以前の事故物件告知状況

実は、ご入居者が亡くなった場合の告知事項の定義は不動産業界の中で最近まで定まっておらず、各々の不動産業者がなんとなくの判断で告知したりしていなかったりしました。

その結果、入居者が亡くなったら必ず告知しないといけないと思われていたり、高齢者が入るとすぐに亡くなられて事故物件になってしまうと考えられてしまい、高齢者の方のお引越しが難しいという状態になっていました。

しかし、これではいけないと国土交通省が2021年10月に標準ガイドラインを定めました。

国土交通省『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』

https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html

さっそくその内容を見ていきましょう。

告知の必要がない場合

まず最も多く発生する自然死、老衰についてです、

(読みやすくするため重要部分のピックアップや一部分削除をしております、全文は国土交通省のサイトをご確認下さい)

賃貸借取引及び売買取引の対象不動産において自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合老衰、持病による病死など、いわゆる自然死については、そのような死が居住用不動産について発生することは当然に予想されるものであり、統計においても、自宅における死因割合のうち、老衰や病死による死亡が9割を占める一般的なものである。

また、裁判例においても、自然死について、心理的瑕疵への該当を否定したものが存在することから、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いものと考えられ、対象となる不動産において過去に自然死が生じた場合には、原則として、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、これを告げなくてもよい。

つまり『自然死(老衰・持病)』は

告知しなくても良いケースとなります ※長期放置された場合を除く

これによって、今まで『高齢者のご入居者の募集はちょっと……』と思われていたオーナー様も

・ オーナー様や不動産屋の方でこまめに連絡を取ったり様子を見れる

・ 介護サポートやデイサービスをご利用している、

等、亡くなって長期発見されないといった事態を防ぐために対策されているのであれば、事故物件となるリスクは限りなく小さくできます。

少子高齢化社会なのでこれからご高齢の方のお問い合わせもどんどん増えていきますし、ご高齢の方は長期ご入居される方が多いので受け入れる方向へシフトしていけば空き室を埋めやすくなるかもしれません。

・日常の中の事故死について

このほか、事故死に相当するものであっても、自宅の階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死については、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられることから、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、自然死と同様に、原則として、これを告げなくてもよい。

となっているので『事故死(階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死)』も告知しなくて良いとなっています

※こちらも人知れず長期放置された場合を除く

恐らく今まで多くの不動産屋がこういったケースを告知事項ありとして賃料を事故物件価格にしていたと思います、ガイドラインに則れば今後は告知不要で通常賃料で募集可能という事になります、少し意外ですね。

・告知期間の定めとして、

賃貸借取引の対象不動産において上記以外の死が発生又は特殊清掃等が行われることとなった死が発覚してから概ね3年間を経過した後は、原則として、借主に対してこれを告げなくてもよい。ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない。なお、借主が日常生活において通常使用する必要があり、借主の住み心地の良さに影響を与えると考えられる集合住宅の共用部分は賃貸借取引の対象不動産と同様に扱う。

今までは一度他の入居者が入れ替われば次の入居者からは告知不要と考えられていたり、1年経てば告知不要とされたり、なんとなく各々の不動産屋で対応されていましが、事故物件は今後は3年経てば告知不要という形へと変わりました。

(ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない)

これにより、入れ替わりの激しい単身者向け物件では事故物件の条件が厳しくなってしまいました。

※こちらの3年期限は賃貸借取引のみの話になっているので、売買の場合は3年経過したとしても必ず告知しなければいけません

・貸室以外の共用部等の死について、

死が発生して特殊清掃等が行われた場合賃貸借取引及び売買取引において、その取引対象ではないものの、その隣接住戸又は借主もしくは買主が日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分において告知事項の有る死が発生した場合又は自然死等の死が発生して特殊清掃等が行われた場合は、裁判例等も踏まえ、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、原則として、これを告げなくてもよい。ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない。

ということで隣の部屋や日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分において自殺等の告知事項の有る死が発生した場合と、自然死等で長期発見されず特殊清掃等が行われた場合であっても、

貸室自体に影響はないので告知の必要なしとなります。

(事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない)

告知しなければいけない死

上記以外の死は告知しなければいけないという事になります。

殺人や自殺、火災等、大々的に取り上げられたり、大きく報道されるような影響の大きな死(ニュースやメディアで取り上げられた等)

自然死であっても長期発見されず、臭気。虫が発生し特殊清掃等が必要だった場合は3年間、募集時に告知義務が有るという事になりました。

告知の必要はないが、聞かれたら答えなければいけない

上記が原則的な対応となるが、これにかかわらず、取引の対象となる不動産における事案の存在に関し、人の死に関する事案の発覚から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、その社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等には、当該事案は取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられるため、宅地建物取引業者は、調査を通じて判明した点を告げる必要がある。調査先の売主・貸主・管理業者から不明であると回答されたとき、あるいは無回答のときには、その旨を告げれば足りるものとする。

自然死・日常等の事故死、自殺等の事故死、または長期発見されず特殊清掃が入った場合、

3年経過すれば募集時に告知をする義務はなくなりますが、お客様から人の死に関する事案の有無の質問を受けた場合は死因や期間に関わらず答えなければいけないとされています。

告知事項を特に書いてない状態でそういった事を気にされるご入居者様は

後から知った場合退去されてしまったり不満を持つ可能性が高いので、

ご入居される前にしっかりと説明して判断して頂く方が良いでしょう。

最後に

日本の自殺率は主要7か国の中でも特に高く、さらに少子高齢化社会が加速しているため、自殺や、孤独死の事故物件が発生しやすい環境が整っています。 年配の方のご入居者を積極的に入れなければ新築の物件でもない限り空室を埋めるのがどんどん難しくなって行くのに、事故物件は発生しやすくなっていくので、なるべくリスクを下げるための対策を取っていかなければなりません。

ポストにチラシが貯まっていないか、家賃がきちんと入っているか、暗い時間帯に電気が付いているか、

見回る事で事故物件を未然に防げる可能性があります。

事故物件になるのを避けるために高齢者の入居者を断るのではなく、どんどん受け入れつつ、事故物件の発生を未然に防ぐようにしていかなければ今後の日本の賃貸不動産運営は難しくなっていくでしょう。