リーマンショックについて
経済の話で暴落や不景気の話題の際に
「リーマンショック以来の〇〇」というような例がよく持ち出されます
アメリカの経済と世界の経済が大変な事になったという事はなんとなく知っている人が多いですが、実際に何がどうなって世界経済が悪化したのか知らない人が多いのではないでしょうか。
今回はリーマンショックについてわかりやすく解説します。
住宅バブルの形成とサブプライムローン

1990年~2000年代アメリカでは、住宅価格が上昇し続けており
「家は買えば必ず値上がりする資産」とみなされていました。
銀行は返済能力の無い人にお金は貸しません
当然、住宅ローンも返済能力のある人のみが審査を通って組めるはずのものでした。
しかし
「住宅価格がずっと上昇し続けているのであれば、お金が無い人・借金を返す能力が無い人にもお金を貸して、仮に返済が滞っても、その時点で家を売却すれば建てた時より値段が上がっているので収支はプラスになるのではないか」ということで
住宅価格は上昇し続けるという大前提の元、サブプライムローンという低所得者や返済能力の怪しい人でも組むことができる住宅ローンが盛況となり
リーマンブラザーズを含め、多くのアメリカの銀行が家を求める顧客とローン契約を結んでいきました。
プライム(prime)とは
最高・最上のという意味になります。
サブプライムとは最上の優れた顧客であるプライム層の
sub-下に prime-優れた顧客=信用度の低い顧客という意味になります。
サブプライムローンの証券化

銀行は貸し出したローンを債権化商品に変えて債券市場で世界中の投資家に売却することで資金を調達しています。
それにより金融機関はローンの返済を待たずに資金を回収することができます。
銀行はリスクを他の金融機関に転嫁しつつ、再びローンを貸し出すことができます。
住宅ローン証券は国債などよりも利回りが高く、抵当権もついているので万が一返済ローンのが滞っても、住宅を売却すれば資金を回収できます。
抵当権とは
住宅ローンなどで借りたお金の返済が滞った場合に、債権者(金融機関や証券を買った人など)が、担保として設定した不動産(土地や建物)を売却することで、優先的に弁済(お金の回収)を受けられる権利
当然サブプライムローンも証券化され
リクスが低く、リターンが高い商品として
多くの投資家に買われました。
住宅バブルの崩壊

住宅価格が際限なく上昇し続ける事など当然あり得ません
2005年~2006年の間で住宅価格の上昇はピークを迎え
そこから住宅バブルは弾けました。
ローンの金利が上がり続け、月々の返済額が増え、返済が滞る人が増えていきました。
サブプライムローンを組んでいた人達は契約時に「仮に返済が滞っても住宅価格は上がり続けているので、売却すれば借金が返せるし、差額で儲けが出る」
と銀行から説明を受けていました。
しかし、住宅価格が下がってしまったため、家の価値が返済額の半額になってしまい、今更住宅を売却しても多額の借金だけが残るような人が沢山出ました。
当然、証券の価値も暴落し、銀行も投資家も多大な損害を負いました。
多くの銀行の経営破綻
2008年9月15日
リーマンブラザーズはアメリカ五大投資銀行グループの
第4位に名を連ねる銀行でしたが
サブプライムローンの証券化を積極的に行った銀行でした
この住宅バブルの崩壊によって経営破綻となりました
負債総額約6000億ドル(約64兆円)というアメリカ合衆国の歴史上最大の企業倒産であり
世界連鎖的な信用収縮による金融危機を招きました。
この他にも多くの銀行が多額の損失を受け経営破綻を起こしました。
『ワシントン・ミューチュアル』(米国最大の相互信用金庫) 経営破綻→JPモルガン・チェースに買収される
『ベアー・スターンズ』(米国5位の銀行)経営破綻→JPモルガン・チェースに買収される
『メリルリンチ』 経営破綻→(米国3位の銀行)バンク・オブ・アメリカに買収される
など、大手銀行が経営破綻を起こしました。
世界中で景気後退へ
アメリカでいくつもの銀行が破綻しましたが
これを日本で例えるなら
ゆうちょ銀行
みずほ銀行
三井住友銀行
が一斉に多大な損失を出すと同時に潰れて
急遽、三菱UFJ銀行やりそな銀行と合併するようなものです。
アメリカは世界経済の中心ですから
上記の例よりもさらに絶大な損失や信用不安を引き起こした事でしょう。
こうして銀行は大規模な損実を出したことでリスクを取る事を恐れ、
企業や個人への融資が厳しくなりました。
特に、中小企業や新興企業は運転資金や投資資金を借りられなくなったために打撃を受けました。
株式への投資も少なくなり、企業は資金調達が難しくなり、設備投資や新規事業を縮小しました。
これにより経済成長が停滞。
失業率は10%を超え、景気が悪くなると同時に人々の消費も落ち込みました。
連鎖的にアメリカへ輸出を行っている企業がダメージを負います。
日本では特に自動車(トヨタ、ホンダなど)や電機(ソニー、パナソニックなど)の輸出がアメリカの消費の落ち込みに併せて大幅に減少しました。
2009年のリーマンショック後の日本の貿易状況として
円建て輸出では前年比 33.1%の減少
輸入は37.8%減少
前年比30%以上減少したのは戦後初めてのことでした。
こうしてアメリカの景気悪化と連鎖して日本ひいては世界中の景気にも大きく影響を及ぼしました。
リーマンショクから学べる事

こういった、長期的に価値の吊り上がっているモノへの妄信は世界中で見られます。
例えば、日本のタワーマンションの市場価格が20年で2倍以上に上がっています。
それに伴いタワーマンションの資産価値も上がっています。
特に2022年頃からは日本ではタワーマンションの資産価値は暴騰しつつあり
多くの資産家や外国人投資家も注目しています。
日本人の高収入な共働き世代の方なども、
タワーマンションを購入し、『資産価値が上がる前提の下で』しばらく住んで価格が上がったら売ろうと考え、購入に踏み切る人もいます。
しかし、購入した物件の資産価値が本当に上がり続けるのか
今がバブルなのか正常な値段なのかは、実際にバブルが弾けてみなければわかりません。
「タワマンは資産価値が上がり続ける」「人気エリアだから大丈夫」「買っておけば損はない」
そういった現状に蔓延する楽観的な考え方は、かつてのアメリカの住宅価格事情と似ています。
もちろん、同じことが必ず起きるとは限りません。
しかし「今の状況はちょっと異常かもしれない」「この価格高騰はどこかで終わりかもしれない」と
冷静に一歩引いて考えてみることが、今後の資産形成や不動産投資において非常に重要なのではないでしょうか?