高齢者の一人暮らしが多くなっている中で当然、賃貸での死亡事故も増えています。

高齢者の自宅内での死亡事故を防ぐにはどのように対策を取ればいいのでしょうか?

厚生労働省が発行する 『「人口動態統計」家庭における主な不慮の事故による死因(2019)』を見ると家庭内事故死が13,800件

交通事故死が3,819件 

つまり、家庭内での事故死は交通事故死の3倍以上となっています

そしてそのほとんどの割合を、65歳以上の高齢者の方の『転倒・転落』『溺死』『誤飲』が占めています

今回は住居として対策が取れる、転倒・転落、そして溺死について着目・解説します。

何故高齢者はお風呂で溺死するのか


『お風呂で溺死』と聞いた時、あなたは具体的にどのような情景を想像しますか?

浴槽に入ろうとして足を滑らせてそのまま溺死という想像をしているかもしれません。

ですが、普通に考えて足を滑らせたくらいで、自分のひざまでしかないようなお風呂で溺死というのは想像しづらいですよね

(もちろん衰え具合や状況によってはそういった死亡事故もあります)

実の所、高齢者でのお風呂での死亡事故はそのほとんどが浴槽に入ったまま、突然意識を失い

そのまま溺死する、『ヒートショック現象』によって起こります

ヒートショク現象とは

温かい部屋から寒い廊下に出ると体は急激な温度の変化にさらされ、

ぶるぶると筋肉を震わせ、熱を作ります

皆さんも急に部屋から外などの寒い場所に出た際に体がブルッと震える事があると思います。

同時に体は体内の熱を逃がさないために血管を急激に縮めます、すると細い血管に血液を送るために心臓に負担がかかり血圧は急激に上がります。

その後すぐに温かい浴槽に浸かると今度は血管を広げ、外に熱を逃がすため、上がっていた血圧が急激に下がります。

この血圧の乱高下により心筋梗塞、致命的な不整脈、脳梗塞や脳出血などを引き起こし、意識を失い、そのまま溺死してしまう現象をヒートショク現象と呼びます、

急に意識を失うので抵抗するすべはなく、湯船に顔をつけたまま亡くなってしまったり、顔が出たままでも意識障害を起こした原因となる脳梗塞や脳出血等で亡くなってしまったりと死因は様々です、

また、湯船で亡くなった方が一人暮らしなどで発見が遅くなると、普通に居室で亡くなった方よりも凄まじい悪臭や腐敗を招くので、修繕費用がより多く必要になる場合があります。

入居者ができる対策

・廊下を出る際に寒くないように着こんで出る

・部屋と浴室を結ぶ場所にはヒーターなどの暖房器具を設置する

・1番風呂の寒い浴室でいきなり浴槽に入ると血圧が急激に下がるので、

シャワー等で熱いお湯を出し、入浴前にある程度浴室にお湯をまいて温めておく

・シャワーで体の先から温めてからゆっくりと浴槽に入る

・入浴前にお酒を飲まない(お酒を飲んで血圧が下がった所に、入浴してさらに血圧が下がり意識を失うリスクが高くなります)

大家様ができる対策

・寒い季節になったら入居者にヒートショクの注意喚起をする、

・断熱材・全館空調の導入、

・ヒートショックセンサーの導入

ヒートショク現象があまり知られてない、もしくは軽視しているために亡くなる方が多くなっているため、周知する事が最も大きな対策になります。

お風呂だけでなく、トイレでも起こるヒートショク現象

室内との寒暖差でヒートショク現象が起こるので、当然、温かい室内から寒いトイレに移動した際もヒートショク現象が起こる可能性があります。
特に冬の夜間に暖房の効いた寝室から10度以下トイレに行き、強く力むことで心臓に多大な負担がかかり、そのまま倒れてしまう方がいます。
そういった場合に備えて、暖房の効いた部屋から出る際の厚着を一枚用意しておいたり、暖房便座に変えたり、それが難しければ便座シートをつけるだけでも体にかかる負担は軽減されます。
少し工夫するだけでも体にかかる負担を軽減することができます。

転倒防止

高齢者は身体の衰えと共にひざが上げ辛くなり、またバランス感覚の低下により、歩き方が小刻みに、すり足になってきます

その結果、普通に歩ける人が躓くことのないような些細な段差で転倒し、頭を打って大けがを負ったり亡くなったりしてしまいます。

一般の賃貸住でも対策を取る事で転倒事故の確率をある程度さげる事が可能です。

入居者にできる事 

適度な運動、買い物や散歩にでかけて歩行力の衰えを防ぐ

すべりやすそうな所に滑り止めマットなどをしく(浴室・脱衣所等)

室内での転倒予防シューズの常用(段差等でつまずきにくい処置の施された室内靴です)

大家様ができる事

玄関、廊下、トイレ、お風呂に手すり設置。

バリアフリー化

和室との間の微妙な段差をなくす(ホームセンター等で買える和室用簡易スロープ)

今後の日本の高齢者物件の事故について

日本は超少子高齢化社会に突入し、高齢者がどんどん増えているため、当然に賃貸での不慮の事故も増えていきます。高齢者が多く入るような古いアパートでは階段の傾斜が急だったり、部屋のちょっとした部分に段差が多かったりするため、少しでも事故を無くすために対策を取っていく必要があります。
加齢に伴う運動能力の低下は防ぎようがないため、日々の運動やなるべく転びやすいものを置かない作らない、転びやすい場所につかめる手すりを用意するなどの改装が必要となります。

少しでも悲しい事故を無くすことができるように、大家様から、入居者側から、それぞれ意識して事故の元を減らしていくようにしていくように生活や設備を改善していく必要があります。