賃貸物件を借りる時、連帯保証人が必要だというのはみなさん、なんとなくご存じかと思います。

数々のドラマ・映画でも、連帯保証人になるとロクな目に合わないというのが物語上示されています。 『闇金ウシジマくん』『賭博黙示録カイジ』 等で一度は話に聞いたことのある人も多いでしょう。

では連帯保証人の何が問題なのでしょうか?

今回は連帯保証人の問題点をお伝えしたいと思います。

まず大きな問題として、連帯保証人になるメリットが一つもないということ。

まず、連帯保証人には

「連帯保証人になってくれてありがとう」と保証する相手に感謝されるくらいしかメリットはありません、そしてそのメリットとは到底吊り合うことない、リスクとデメリットが潜んでいます。

よく誤解されているのが、単に保証人といっても『保証人』と『連帯保証人』の2つの種類があり、

賃貸の契約でよく使われる 『連帯保証人』 になってしまった場合は、

普通の『保証人』にある3つの権利が無いのです。

その3つの権利が

・催告の抗弁権

・検索の抗弁権

・分別の利益

というものです

では、その3つの権利が無いとどうなるのか確認していきましょう。

・催告の抗弁権が無い

自分に請求されたら自分が支払う。

「連帯保証人になったけど、まずは債務者に取り立てが行くので、自分の所に来るのは最後の最後でしょう?」と思っている方は多いと思います。

しかし、連帯保証人には『催告の抗弁権』がないため、そんな当たり前の事が適用されないのです。

民法第452条(催告の抗弁)

債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089


つまり、この 『催告の抗弁』の権利がないという事は、債権者から請求が来た際に「まずは債務者の方に請求をしてください」と言う権利が無いという事です。もし大家様が連帯保証人の貴方の方が請求しやすそうだ、と考えて請求をしてきた場合にそれをが拒むすべはありません、裁判でも負けてしまいます。
債務者の賃料を保証してあげているという認識よりも、自分が債務者と同じ金額を背負っている事を覚悟する必要があります。

・検索の抗弁権が無い

債務者にどんなに資金があっても、自分に請求が来たら自分が支払う

「連帯保証人になったけど、債務者は金持ちなので自分の方に請求はこないだろう」と思っている方は多いと思います。

しかし、連帯保証人には『検索の抗弁権』がないため、そんな当たり前の事が適用されないのです。

民放第453条 (検索の抗弁)

債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

この 『検索の抗弁』の権利がないという事は 債務者がフェラーリを乗り回し、実家に土地と豪邸を沢山所有していたとしても、支払いを拒み続けて資金が回収できないとなった場合に大家様から連帯保証人に請求が来た時はその債務を弁済しなければいけないという事です。
債務者にどんなに資金があったとしても、自分に請求が来たら自分が支払わなければいけないのです。

・分別の利益が無い

連帯保証人が複数人いたとしても、自分一人に請求が来たら、全部自分が支払う

「連帯保証人になったけど、他にも連帯保証人がいるようだから、分割されればそんな高額な請求はこないだろう」と思っている方は多いと思います。

しかし、連帯保証人には『分別の利益』がないため、そんな当たり前の事が適用されないのです。

民法第427条 (分割債権及び分割債務)

数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

民法第456条(数人の保証人がある場合)

数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

この 『分別の利益』がないという事は 例えば4人でルームシェアをして大きい賃貸を借りており、賃料が20万円の物件だった場合、それぞれに1人ずつ 連帯保証人がついて、連帯保証人が4人いるとしても、オーナー様が貴方に請求するのが一番回収しやすそうだと考えてあなたに一括で請求をした場合、家賃をを3ヶ月滞納しただけで60万円の請求が来ることになってしまいます。

「滞納分60万円を連帯保証人の4人で分割して15万円ずつ請求して下さい」
とオーナー様に頼む権利はないのです。

上記3つの点、「普通認められて当たり前だよね?」と思えるような権利がないので、

連帯保証人になるという事は非常にリスクが高いものとなります。

あくまで上記に上げたのは極端な例になりますが、それでも「このような請求の仕方が可能である」という事に変わりありません。
連帯保証人になるという事はそれだけ不平等で不利な契約を結ぶという事なのです。

連帯保証人が保証しなければいけないのは家賃だけではない

連帯保証人に課される責務は、家賃の保証だけではありません、もし滞納のうえ強制解約になってしまった場合家賃+修繕費用が請求される場合があります。借主側過失によるの汚損、破損が酷い場合は数十万円~数百万規模の修繕費用が請求される場合もあります。

債務者が家賃を何年分も滞納し、最後に自己破産をしても連帯保証人には返済義務が残るので、もし払えない場合は最悪連帯保証人も巻き添えに、家を売ったり自己破産しなければいけなくなります。

連帯保証人になる場合はそれだけの重い責任とリスクがある事を理解して、最悪の状態を覚悟してから書類にサインをしましょう。

2020年、法改正で少し負担が軽くなった連帯保証人制度

2020年4月に連帯保証人の制度に関して法改正がありました、
今までは債務者がいくら滞納したとしても滞連帯保証人に全て請求できたため、
あまりにも負担が大きすぎるという問題がありました。

それが法改正により、連帯保証人の契約を結ぶ際に極度額を定めなければその保証契約は無効という形になりました。
つまり、『この契約の最大請求金額はここまで』という決まりを設けるようにすることで、今までのように際限なく増え続けた滞納を全て請求するという事はできなくなりました。

また、契約を結ぶ際に契約書面に極度額がしっかり示されることで、今まで多くの人がなんとなく書類にサインをして契約を結んでいたのが「最大でこんなに金額を払わなければいけないんだ」という事が明示され契約する際にしっかりと考えて契約を結べるようになりました。

最近は保証会社の利用も増えている

昨今は賃貸契約を結ぶ際に個人の連帯保証人を立てるのではなく『保証会社』との保証契約を必須とする大家様がが多くなっています。

保証会社は毎月の家賃を入居者からお預かりし、オーナー様もしくは管理会社に送金する会社です。
そして入居者が滞納してしまった場合は代わりにその月の家賃を立て替えてくれます。
法人なので極度額が無く、滞納した際の追い出しの裁判の費用や、夜逃げされた際の荷物出しの費用も負担してくれます。 詳しくはこちらのページをご覧ください

『保証会社ってなに?』

元々は身内などがおらず連帯保証人になってくれる方がいない賃貸人様が利用するサービスでしたが、
前述した法改正により極度額を定める必要ができたため、家賃を払わず、解約もできずに居座った入居者に対して極度額を超えた滞納分を請求できなくなる、といったリスクを考え保証会社を利用必須にするケースが増えています。

前述したとおり、連帯保証人になるメリットは一つもないのですから、もし「賃貸の連帯保証人になってくれないか」と頼まれた場合は、保証会社を利用するように勧めてみてみるのも一つの手ではないでしょうか?