賃貸住宅における無許可のペット飼育問題は昔から続く難題となっています。
「ペットの不許可の物件に入居者がこっそり猫を飼育させていた」なんてことはよくある事です。

私も猫を飼っているので、猫が可愛いと思う気持ちも、こっそりでもいいから飼ってしまいたいという気持ちもわかります。
しかし実際にお部屋を貸し出している大家様からすれば匂いや傷が多く残ってしまうためたまったものではありません。

猫は防音がしっかりした部屋であれば多少鳴いてもばれないですし、ウサギやモルモットなども完全に室内飼いすればほぼバレることはないので、こっそり飼ってしまう入居者が世の中にはそれなりにいるようです。

今回はペットをこっそり飼っていないか、怪しい入居者を調べる方法
もし飼っていたらどんな対応をするべきなのか
退去時のやりとりなどをご紹介します

ペットをこっそり飼っている怪しい入居者を見つける方法

基本的にこっそり犬を飼う人はあまり多くありません、犬は毎日散歩に連れて行かなければなりませんし、吠える音はかなりの大きさになるため、こっそり飼う事は難しくなります(それでも稀に小型犬を飼う人は稀にいるようですが)
そのため、基本的にこっそり飼われるの動物の多くが猫になります。

しかし、オーナー様自身で物件に住んでいるわけでもない限り、ペット飼育の気配を察知する事は極めて難しくなります。

ここではペットを飼っている入居者がいないか確認する簡単な方法をお伝えします。

オーナー様ができる確認方法

とりあえず昼の物件に足を運び、窓を見てみる

最も手軽な確認方法として日中の窓を確認してみる方法があります。
猫は縄張りの監視や日光浴のため日中は窓から外を眺める習性があります、日中に物件の窓を見てみたら普通に猫が顔を出しているという事があります。
しかし、ブラインドやすだれで窓を塞ぐなど、対策されている場合は発見は難しくなります。

私の飼っている猫も毎日いろいろな部屋の窓から必ず外を眺めていますし、暖かい日は窓際で日向ぼっこをします。
もしブラインドなどで窓を塞いで対策している場合は猫にとって大変なストレスになっているはずです。

ゴミを確認する

生き物を飼う以上おトイレと食事が必ず発生します、うちの猫も朝・夕方・夜かならずトイレをします。
燃えるゴミには必ず、抜け毛、餌の袋や猫缶、トイレ砂等が捨てられることになります。
外から袋を見るだけでも発見できることはありますし、特に猫のトイレの匂いはかなり強く、普通の生ごみとは明らかに違う匂いがします。
すでにある程度情報を掴んでいる場合は怪しい入居者が捨てたゴミなどを開けて調べてみれば飼育を確定できます。

住人の噂、動物の毛など、少しでも怪しいと思ったら色々な入居者に確認してみる

ペットの飼育が発覚する最も多いケースが入居者からのタレコミやです。「飼っている人がいるらしい」という噂が上る程度でも無断飼育の可能性は十分に上がります、火の無い所に煙は立ちません。
賃貸でお部屋を借りている以上は少なくて2部屋、多くて上下左右4部屋の他の入居者と壁を接していることになりますから、隣室の入居者は気づける事も多くなります。

全室に手紙を投函

弊社でも騒音や違法なゴミ出し、ペット飼育の可能性などがある場合はその物件の全室に注意喚起と心当たりのある方がいないか確認するお手紙を投函しています。
その結果として無断飼育に心当たりのある入居者様からご連絡をいただける事が多々あります。

手紙に書く内容として目撃した場合だけでなく、足音・鳴き声・匂いなど些細なものでも心あたりがあればご連絡頂けるような文面が良いでしょう。

足音・鳴き声

猫はトイレ後と深夜に物凄い勢いで駆け回ります。
野生の猫はトイレ中は無防備になるため天敵を警戒しながら用を足し、その後の自分の匂いが強く残る場所から素早く離れるために走っていました。また、昼間にぐっすり寝て力を溜めて夜に狩りを行っていたため、野生の本能の名残として家猫もトイレ後は走り回り、夜中も走り回ります。
私の飼っている猫も用を足す度にリビングをグルグルと駆け回ります、凄い勢いで走るためにかなりの音がします。
賃貸であれば隣や階下の部屋には明らかにドタッ、タタタタタと駆け回る音が当然響きます。また餌の時間の前や朝方は甘えた声で鳴くことが多いため、木造であればすぐに他の入居者が気づくでしょう。

匂い

どんなに消臭剤等を使っていても獣臭はかなり強いものなので服に染みついた匂いや、部屋の前を通った時の匂いで他の部屋の入居者が不審感をもってくれることがあります。

動物アレルギー

音や匂いが漏れ出ていなくても付近に動物アレルギーの入居者が住んでいればアレルギー反応が出るため、
どこかの部屋でペットを飼っているのではないか?と問い合わせがくるでしょう。
アレルギーは身体や生命にかかわる事なので、なるべくはやく解決してあげる必要があります。

入居中にペットの飼育が発覚した場合の対応

現在入居している方のペットの飼育が発覚した場合に揉め事を恐れておざなりに済ましてしまっては示しがつきません。
きちんと対応しなかった場合に、その後に万が一裁判となった際に、不利になってしまう場合があります。
ペット飼育を発見した場合におおまかに4つの対応があります。

里親に出させる

最も穏当な解決法です期限を切っていつまでに里親に出させなければ退去という形になる事が多いです。
また、飼っていた事実は消えないため敷金の積み増しなどを行い、退去時クリーニングの借主負担分を多くとる事になります。

退去させる

問答無用で解約通知を書いて頂き退去頂く形になります、無断でペットを飼育してしまうような入居者ですと、他にも問題を起こす可能性が大いに高くなりますので、今後の安全を考えるならご退去頂くのも一つの手でしょう。

追加の賃料や敷金を払ってもらい、思い切ってペット可物件にしてしまう

なかなか空室の埋まらないお部屋であったり需要がない物件であれば思い切ってペット可物件にしてしまう方法もアリとなります、もちろん賃料を上げたり敷金を積み増して頂く必要がありますが。
ペット可物件は少なく、需要があるため他の部屋の空室が埋まる場合があります。
しかし、現在入居されている方にアレルギーなどの問題がないか手紙や電話などで確認を取った方が良いでしょう。

解決しない場合は裁判を行う

無断飼育をした挙句にペットを手放す気もないし、退去する気配もない入居者に対しては最終的に契約解除・明け渡し請求の裁判をする形になります。
しかし、ただペットを飼っていただけでは契約の解除は認められません、

契約の解除が認められるケースはオーナと入居者間で「信頼関係の破壊」があったと認められる場合になります。

ペットの無断飼育に関する裁判の判例を見てみると、

・契約時にペット飼育が不可である事を説明し契約書にも明記している事。
・その後ペット飼育が発覚した際に速やかにペットを手放すか解約するように通告している事
・通告をしたにもかかわらず1ヶ月以上ペットの飼育を続けている事
こういった場合に信頼関係が破壊されたとして契約の解除が認められます。

契約書にペット禁止が明記されていなかったり、口頭でもペット飼育を許可をしたかのような発言をしてしまったりしていると解除が難しくなります。

また、ペット飼育が発覚した際に「毎月賃料は払っているから、ペットに関してはそのうち注意しよう」「入居率が悪いからしばらくはこのままにしておこう」という風に速やかに対応しなかった場合は、後から裁判を行っても『黙示の承認』を得ているものとして扱われ信頼関係の破壊が認められず契約解除や明渡請求ができなくなってしまいます。
ペットの無断飼育を発見した際は速やかに注意しましょう。

退去立ち合い時にペットを飼っていないか確認する。

今まで発覚していないペット飼育を発見する最大かつ最後のチャンスが退去立ち合い時です。
匂いや傷などをよく見て、怪しければ入居者に確認しましょう。
ペットの飼育が発覚すれば借主負担の修繕費用を多めにとる事が出来る場合があります(但し6年以上入居されている場合は、壁紙、畳、クッションフロアの破損や汚れは耐用年数を過ぎているため借主に請求する事ができません。)

無断飼育はペットにも入居者にもストレスを与えます。

上記のような追い出しや裁判などをすると、猫の行き場がなくなるのではないか?自分の行いで殺処分になってしまうのではないか?飼い主と離れ離れになってしまって可哀そうではないか?と心配になるオーナー様もいるかと思います。


そもそもペット不可物件で生き物を飼うには、鳴いたり走ったりしないよう厳しくしつけたり、日中に目立つ窓から顔を出さないように対策する必要があるため、猫もストレスが溜まります。
入居者も猫砂のゴミが目立たないよう細かく分けたり、猫が大きな物音を立てる度に周りから苦情が来ないか、常に心配しながら、心の奥で『契約違反をしている、ルールを犯している』という罪悪感を抱えながら日常生活を過ごす事になります。
それでは本当に猫との生活を心から楽しんでいるとは言えません。
猫・オーナー・入居者(他の部屋の入居者を含め)全員のために、オーナー様はダメなものはダメですと毅然とした対応を取る事が大切です。

しかし、自分が追い出したせいでペットが殺処分になってしまったら心苦しくなってしまいます。上記の対応通りにただ追い出したり、無理やり引き離すだけではなく、このまま入居を続けたいのであれば里親探しを手伝ってあげたり、ご退去を決意されたのであれば不動産屋を紹介したりペット可物件探しに親身になってあげる事で入居者側も態度を改めてくれたり、オーナー様も快く送り出してあげることができます。

本記事執筆者の猫

最後に

南口不動産では無断飼育した際の解約への促しや、修繕費用の請求・物件周りの野良猫の餌やりなどに関しても近隣住民への聞き込みや張り紙など様々な対応を行っています。
ペットに関してお困りの物件をお持ちの方はぜひ南口不動産へ管理物件のご依頼をご相談下さい。